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複合機とDocuWorks、コールセンターシステムの連携でペーパーレス化を実現

近所の内科や大きな総合病院、健康診断などで誰もが経験したことのある血液検査。

検査は当然病院内で行われているだろうと想像しますが、実は、ほとんどの検査業務がアウトソーシングされていることはあまり知られていません。

病院や健診センターが臨床検査会社を採用する理由は、検査種類の多さに他なりません。現在、日本国内で行われる検査の種類は約20,000。どんなに大きな大学病院でも、すべての検査に対応できる環境を整えるのは難しく、機械を導入して院内で実施できる検査は多くて3,000というところだそうです。
つまり、検査環境を持たない残りの17,000の検査は、外部に委託する、ということになります。

写真:協同医学研究所様webサイトより

福岡県福岡市にある株式会社 協同医学研究所様(以下、協同医学研究所様)は、健康診断や病院での血液検査をメインとした検査全般を受託し、検査結果の報告までを行う、臨床検査業務を担われる民間の会社です。

協同医学研究所様は、業界で2番目の規模となる株式会社ビー・エム・エル(敬称略、以下 ビー・エム・エル)の関連会社。臨床検査会社の歴史は長く、ビー・エム・エルは今年60期、協同医学研究所様は36期目となります。
現在、臨床検査業務を専門で行っている会社は全国で600社。さほど多くないという印象を受けます。

「お医者さんが患者さんの判断をするための仕事をしている業界としては、そんなに多くないほうかも知れませんね。約40年前には3000社前後くらいあったのですが、だいぶ淘汰されたんですよ。

昔は、交通手段がバイクや自転車ということで市町村各地域に我々のような臨床検査会社があったのですが、移動手段が自動車になり、昔は手作業で行っていた臨床検査が20年ほど前にはほぼ機械化されたので、いくつかの同列会社が合体して今のような形態になったのでしょう。」取締役執行役員 竹下様(以下、竹下様)

少数精鋭でやっている、という協同医学研究所様ですが、国家資格である臨床検査技師をはじめとした職員は350名、グループで全体では4,000名となる、業界の中でもトップクラスの医療企業です。

コールセンター構築のきっかけ

大学病院からクリニックまで幅広く検査を受託される同社では、検査に関する質問や相談の総合受付窓口として、コールセンターを運営されています。

コールセンター構築のきっかけは、検査に関する専門的なお問い合わせに迅速にお応えするために、専門のスタッフを常駐したお問い合わせ窓口が必要と考えられたことだったそうです。

そして、顧客サービス向上と業務改善を目標としたコールセンター構築を検討され、約4か月という短期間での準備となりました。

ペーパーレス化と自社専用のカスタマイズが条件のシステム選定

コールセンター構築時に、業務改善のひとつにペーパーレス化を挙げられた同社。
ペーパーレス化を目標に掲げた背景には、業界特有ともいえる、アナログな紙運用を一掃したいという思いがあったようです。

「病院ではここ10年位で検査や診療に関わるシステム化がめざましく進んでいます。
ただ、カルテという個人情報の中でも気密性の高い情報なだけに、まだ電子カルテの導入は全体の8%、病院でも手書きが根強く残っているのが現状です。

当社も同様に、検査機器や業務システムに関しては進化していると思います。それでも、手作業、手書きの業務が多く、コールセンターでは対応内容を記入する受付票から申し送り、回答まで手書きという状況でした。
さらに、回答は手作業でFAX番号を入力して送信していました。
手作業だとどうしてもミスも起こりますし、とにかくこの手作業をなくしたかったんです。」と竹下様は語ります。

コールセンターシステムについては漠然としたイメージしかなかった、と振り返る竹下様ですが、たまたま他社で電話受付時にCTIシステムを使っている現場を見学した際に、イメージしていたものより簡単に実現出来そうだ、と確信されたそうです。

「どこのシステムだったか覚えていませんが、電話着信時にお客様の名前がポップアップしてきて、対応内容を入力できるシステムで、こんなに簡単に安価で出来るならいいな、と思いましたね。」

コールセンターシステム導入の条件は、パッケージ運用でなく、カスタマイズが出来ることでした。

「医療系企業では専門用語も多いですし、会社によって管理項目もまちまちなのでパッケージ化が難しく、専門のコールセンターシステムがなかなかないんです。我々は、そういった複雑な管理をやろうとしていた訳です。そのような条件で、カスタマイズが出来るシステムなら予算内でとことんカスタマイズしてみよう、ということになったんです。」
(竹下様)

そして、富士ゼロックス社に、複合機とコールセンターシステムの連携を前提に相談され、ペーパーレス化には富士ゼロックス社製の複合機とDocuWorks、コールセンターシステムはイリイのBIGコールセンターをご紹介頂きました。 CTIシステムはいくつかのシステム会社から提案を受けられたそうですが、コスト面とカスタマイズの出来る自由度の高さが決め手となり、DocuWorksとの連携が可能な、BIGコールセンターをご採用頂きました。

コールセンター業務

“自社の運用に合わせてシステムをカスタマイズ出来ること”を前提とされていた同社ですが、実は機能面でのカスタマイズはせず、標準版で運用されています。

BIGコールセンターでは、会社や業種によって異なる管理項目を自由に設定できるため、標準機能で協同医学研究所様用の管理画面を作成しています。

「システム運用に関しては、思い描いていたものとあまり外れていないと思います。」と竹下様。
協同医学研究所様のコールセンターでは、主に病院の先生や看護師から検査に関する問い合わせなどを受け付けられており、電話応対されるオペレータの方は、約20,000種類という検査内容から医療専門用語の知識を要し、国家資格である検査技師の免許を持っている方もいるそうです。

コールセンター 主任 宮本様

ベテラン社員であれば先生が使う専門用語や検査内容に即答出来ても、経験の浅いオペレータでは即答出来ない場合もあります。そこで、通話内容を全て記録する通話録音システムも併用し、イレギュラーな質問で即答出来なかった場合や、聞き取れなかった専門用語などを、あとから通話録音データを聞き返して対応されています。

FAXで寄せられてくるお問い合わせなどは、PDF化されたものを受信してPC側で管理、閲覧されています。コールセンターからの報告書などは、印刷せずにBIGコールセンターのデータを直接DocuWorksからFAXしています。

導入当初は、イリイがサポートしながら協同医学研究所様独自の印刷フォームを設計していましたが、現在では自社に必要な帳票の設計はコールセンター主任の宮本様自ら作成されているそうです。

DocuWorks+CTIシステムの導入効果

システム導入の効果として、「業務の簡素化」、「顧客情報の共有」、「雇用の安定」の3点を挙げられています。

まずは、「業務の簡素化」、システム導入の一番の目的でもあったペーパーレス化の実現です。

「やはり、DocuWorksの導入が大きかったですね。運用していく上であとから必要な帳票が出てきても、紙で印字することはなくなりました。同様に、DocuWorksから直接FAX出来るようになったので、誤送信がゼロになりました。」(竹下様)

そして、業務の簡素化の一因として1件あたりの対応時間の短縮についても挙げられています。竹下様がスーパーバイザーである宮本様に掲げた目標は、ペーパーレスよりも対応時間の短縮だったそうです。

「ピーク時には、1日500本の通話を6名くらいで受けていました。当時、1件あたりの通話時間は11分でしたが、試行錯誤して9分まで下げたんです。しばらくはそこから下がらなかったんですが、システム導入により、現在は6分まで下げることができました。」(竹下様)

通話時間と後処理を含め、1件あたり10分という目標を立てましたが、10分で完了させるのは難しく、まだ完了していないのに次の電話に対応して…を繰り返していた為、結局は残業して対応していたそうです。システム導入後、通話時間を6分まで下げたことで、後処理を入れても10分で完結できるようになりました。

“コストの削減”という観点からはペーパーレスのほうに目が行きがちですが、残業が減った分、結果的に大きなコスト削減になりました。

次に「顧客情報の共有」です。
システム導入前、頻繁に顧客情報が変更されても対応したスタッフの記憶にしか残っておらず、情報共有がされていませんでしたが、現在では履歴に内容を残すことで誰が受けてもそれまでのやりとりや検査内容などを把握できるようになりました。

また、顧客情報に紐づいた通話録音データについても活用されているようです。

「医療の専門用語だけでも難しいのに、先生が長い単語をアルファベット3文字とかに略すんですよ。それが先生によって違いますからね。スタッフも理解するのが大変で、慣れている人しか即答出来ないことも多々あります。以前は、紙で書いていたものを見返して、理解出来なかった場合は折り返し先生に確認していたんですが、現在は録音データを確認できますからね。折り返し電話をして確認する手間が減り、的確な回答ができるようになりました。」(竹下様)

そして最後に「雇用の安定」です。
前述の「業務の簡素化」、「顧客情報共有」が、最後の「雇用の安定」につながりました。

「現在、7名のスタッフでコールセンターを運用していますが、毎日顔が見えない相手との難しい医療関連の話で、スタッフのモチベーションを保つのが大変でした。今では業務が簡素化され、顧客情報や対応履歴を確認しながら応対出来ますし、イレギュラーな話でも先輩スタッフのサポートがありますので、スタッフに余裕が生まれ、雇用の安定につながったと思います。」と竹下様。

結果的に、ペーパーレス化によるコストの削減に加えてスタッフの雇用安定や業務の簡素化による人件費の削減が大きなウェイトを占め、システム導入費用は約3年で回収できるとの統計を出されています。

今後の展望

取締役執行役員 竹下 浩一氏

コールセンターの責任者である竹下様は、営業職や企画などさまざまな部署で経験を積み、スーパーバイザーである宮本様は、検査技師から始まり、業務部門や病院での検査室委託(ブランチラボ)への常駐を経てコールセンターへと配属されたという異色のコンビだそう。

「業務内容や検査内容、2人合わせて幅広い知識を持ち合わせているだけでなく、業務改善や向上意識が強いという共通点があったからこそ、コールセンターの立ち上げや運用がスムーズに運んだのでしょうね。

宮本が“一緒にやりましょう”と言ってくれなければ、きっとうまくいきませんでしたよ。」 そう竹下様は話します。

コールセンターの立ち上げからこれまでの期間は情報を貯めて耕す期間、今後は、このデータを活かし、展開していくことが目標のようです。

「システムは1か0でしかない訳で、結局、活用するのはヒトですからね。PCだけに頼らず、うまくコントロールして活用できるようにしていきたいと思っています。当初掲げた目標はすべてクリアし、思った以上に順調にいっていると思います。

この成功例をここだけで終わらせるつもりはなく、今後は拠点内の他部署へペーパーレス化を推進したり、他のシステムと連携させたりもしたいですね。また、コールセンターを他の拠点にも展開していきたいと考えています。」(竹下様)

コールセンターにとどまらず、集配の基幹システムとの連携や営業拠点へのCTIシステム導入など、まだまだシステムを進化させることに意欲的な、同社の今後の展開が楽しみです。

 

※文中に記載された「DocuWorks」は、富士ゼロックス株式会社の商標または登録商標です。